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それでも世界は回っている 1*吉田篤弘

  • 2021/09/15(水) 07:36:45


「奇妙な惑星」博物館の保管室に勤務する十四歳のオリオ。
師匠のベルダさんと二人、世の中のあらゆるものを記録し保管すべく作業に勤しんでいた。
そんなある日、ベルダさんが死んだ。
自殺か、病気か、事件か。
原因がわからぬまま、オリオは保管室の責任者を引き継ぐことになる。
ところが――。
ベルダさんが記録に使用していた万年筆のインク、〈六番目のブルー〉の在庫がない。
あれなくして記録作業はできない。
幻のインクを求めるオリオの旅が始まった。


舞台も設定も、登場人物たちひとりひとりも、「一般的」とは言いかねる個性を持っている。だからこそ芽生え育った世界なのだろう。時間も距離も、常識にはとらわれず、それでもなお、人間の思考性は保たれている印象で、そこにそこはかとない安定感も見いだせる気がする。全体的な揺らぎをつなぎとめているもの、とでも言えばいいのか。著者の物語には、さまざまな意味での旅を感じることが多いが、本書の登場人物たちの旅は、まだまだ始まったばかりという感じである。これからどこへ連れて行ってくれるのか愉しみな一冊である。

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