fc2ブログ

薔薇のなかの蛇*恩田陸

  • 2021/10/18(月) 07:06:08


変貌する少女。呪われた館の謎。
「理瀬」シリーズ、17年ぶりの最新長編!

英国へ留学中のリセ・ミズノは、友人のアリスから「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった館のパーティに招かれる。そこには国家の経済や政治に大きな影響力を持つ貴族・レミントン一家が住んでいた。美貌の長兄・アーサーや、闊達な次兄・デイヴらアリスの家族と交流を深めるリセ。折しもその近くでは、首と胴体が切断された遺体が見つかり「祭壇殺人事件」と名付けられた謎めいた事件が起きていた。このパーティで屋敷の主、オズワルドが一族に伝わる秘宝を披露するのでは、とまことしやかに招待客が囁く中、悲劇が訪れる。屋敷の敷地内で、真っ二つに切られた人間の死体が見つかったのだ。さながら、あの凄惨な事件をなぞらえたかのごとく。

可憐な「百合」から、妖美な「薔薇」へ。
正統派ゴシック・ミステリの到達点!


英国・ストラットフォードのブラックローズハウスが舞台だが、海外ものにありがちな不自然さは全くなく、ミステリアスな空気の中で物語は始まる。今回、主役は理瀬ではなく、ブラックローズハウスの主・レミントン一家なので、理瀬目線で描かれることは多くはないが、その存在感は見逃せない。事件は凄惨で、スプラッタ映画かと思わされるような目を覆いたくなる場面もあり、思い出したくはないが、それ以外は、起きていることとは裏腹に、いたって静かに時間が流れる。人間の裏側と、事実の陰に隠された真実の奥深さが、まだまだ解き明かされないことがありそうな疑心暗鬼に苛まれる。このままでは絶対に終わらない予感が立ちこめる一冊である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する