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黒牢城*米澤穂信

  • 2021/11/01(月) 18:06:21


信長を裏切った荒木村重と囚われの黒田官兵衛。二人の推理が歴史を動かす。

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の到達点。『満願』『王とサーカス』の著者が挑む戦国×ミステリの新王道。


歴史は苦手なので、それとミステリがどう結びつくのか興味があった。命のやり取りをする現場であるにもかかわらず、いわゆる安楽椅子探偵ものの設定であり、しかも探偵と助手が敵同士というとんでもない設定である。にもかかわらず、この魅力は何だろう。互いに敵なのか味方なのかも計り知れず、城内にあっても、心底安心することはない日々のなかで、地下の土牢の前で、官兵衛と向き合う時だけが村重の心を満足させるとは、何たる皮肉であろうか。ひとえに、官兵衛の知略の故であろう。だが、その目的は決して村重を心安くするものではないのが、切ないところである。しかも、そもそもの目的のもとになった出来事が最後の最後に覆るとは。戦国の世のすさまじさを見せつけられるようでもあり、真に分かり合えるふたりであることの喜びもあったのではないかとも思わされる。息もつけない一冊だった。

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