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連弾*佐藤青南

  • 2021/11/03(水) 16:46:43


都内の小さな公園で死体が発見された。警察は殺人事件と判断し、特別捜査本部を設置。捜査一課の音喜多弦は、音楽隊志望という少し変わった所轄署の刑事・鳴海桜子と捜査を開始した。遺留品にクラッシクコンサートのチケットがあったことから、関係者を訪れる二人だが……。時を超えた愛憎と狂気が渦巻く、慟哭の傑作ミステリ。


殺人事件の大元となった過去の出来事と、事件を捜査する現在の状況が交互に描かれる。過去にはディスレクシアでありながら、たぐいまれなる音楽性を持った少年と、自分のピアノの才能に限界を見てしまった少女との出会いがあり、現在では、ちょっと変わった警察音楽隊志望の女性刑事と捜査一課の刑事のコンビが捜査に当たるなかで、どうやら彼女が相貌失認ではないかとわかってくる。人とは違う特性を持ちつつ日々を過ごす人たちの苦悩をもう少し掘り下げてほしかった気もする。ミステリとしは、犯人当ての醍醐味は少ないが、執念のような強い気持ちが伝わってきて、こういう犯罪者がいちばん怖いのではないかとも思わされる。ほんの少し踏み出す方向が違っていたら、まったく別の物語になったかもしれないというやりきれなさに満ちた一冊でもあった。

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