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六人の嘘つきな大学生*浅倉秋成

  • 2021/11/07(日) 16:38:17


「犯人」が死んだ時、すべての動機が明かされる――新世代の青春ミステリ!

ここにいる六人全員、とんでもないクズだった。

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を
得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。


日本の就活の過酷さとミステリをうまくマッチングさせた物語だと思う。現実の就活中は、自分をアピールすることに懸命で、相手を陥れるためにここまでする余裕はおそらくないだろうと思うが、リクルートスーツに包まれた表面だけでは計り知れないものを、それぞれが隠し持っていることは確かなことで、それは何ら不思議ではない。人事担当者さえ、ひとりひとりの人間性を的確に読み取れるわけではないのに、大学生にそれができるとはまず思えない。とは言え、小説なので、これもありである。初めは、与えられた課題に向けて、サークル活動的なノリで前向きに取り組んでいた六人が、あることを境に、互いに疑心暗鬼に陥り、じりじりと追い詰め合っていく様子に手に汗握る緊張感が漂う。何度も何度も優位が変わり、互いを見る目が変わり、本心を探り合うさまは、息ができなくなりそうであり、一瞬先にはまた展開が変わるのではないかという恐怖に似た心持ちにもさせられる。誰がいちばん鋭い剃刀を持っているのか。知りたいようで最後まで知りたくないような、不思議な気持ちにもなる。読み応えのある一冊だった。

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