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神様の罠

  • 2021/11/09(火) 18:01:44


人気作家6人の新作ミステリーがいきなり文庫で登場!
現在のミステリー界をリードする6人の作家による豪華すぎるアンソロジー。
最愛のひととの別れ、過去がふいに招く破綻、思いがけず露呈するほころび、
知的遊戯の結実、そして、コロナ禍でくるった当たり前の日常……。
読み解き方も楽しみ方も六人六様の、文庫オリジナルの超絶おすすめ本です。


【収録作品】
乾くるみ『夫の余命』
余命わずかと知りながら、愛を誓ったふたりは……
米澤穂信『崖の下』
スキー場で遭難した4人。1人が他殺体で見つかり……
芦沢央『投了図』
地元でタイトル戦が開かれる。将棋ファンの夫は……
大山誠一郎『孤独な容疑者』
23年前、私はある男を殺したのだ……
有栖川有栖『推理研VSパズル研』
江神二郎シリーズ待望の新作!
辻村深月『2020年のロマンス詐欺』
大学生になったけれど、コロナ禍で……


それぞれ、違った趣向で愉しめたが、なんといっても最後を飾る辻村作品が面白かった。まず冒頭に事件の新聞記事が置かれ、その後にそこに至る顛末が描かれるという趣向である。記事を見ただけのときは、「あぁ堪え性のない若者が困ったものだなぁ」くらいの、よくある事件の記事を読んだ感じだったのが、顛末を詳しく知ると、まったく印象が変わってくる。起こった事件そのものは全く変わっていないのに、不思議なものである。どんな事件にも、そこに至る事情があるのだろうと想像すると、事件そのものは容認できるものでないとしても、景色はずいぶんと変わってくるのかもしれない。裁判員裁判の参考資料がこんな風だったら、判断が大きく変わるかもしれないとも思ったりする。それにしても、悪意に呑み込まれていく過程は、引き返そうとしても引き返せない心理状態に引きずり込まれるもので、恐ろしすぎる。愉しい読書タイムを過ごせる一冊だった。

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