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雷神*道尾秀介

  • 2021/11/19(金) 16:14:31


埼玉で小料理屋を営む藤原幸人のもとにかかってきた一本の脅迫電話。それが惨劇の始まりだった。
昭和の終わり、藤原家に降りかかった「母の不審死」と「毒殺事件」。
真相を解き明かすべく、幸人は姉の亜沙実らとともに、30年の時を経て、因習残る故郷へと潜入調査を試みる。
すべては、19歳の一人娘・夕見を守るために……。
なぜ、母は死んだのか。父は本当に「罪」を犯したのか。
村の伝統祭〈神鳴講〉が行われたあの日、事件の発端となった一筋の雷撃。後に世間を震撼させる一通の手紙。父が生涯隠し続けた一枚の写真。そして、現代で繰り広げられる新たな悲劇――。
ささいな善意と隠された悪意。決して交わるはずのなかった運命が交錯するとき、怒涛のクライマックスが訪れる。


あの四人さえいなければ、これほど悲惨で後々まで哀しみを引きずる出来事にはならなかったのではないか。そう思うと、男たちの身勝手さが心底恨めしい。そして、胸の裡に渦巻く不安と、罪の意識などによる思いこみと勘違いによって、さらに事態は悪い方に転がってしまう。誰もが大切な人を思いやり、互いに大事なことを隠し合ったがための悲劇もある。それらがすべて白日の下にさらされた時、哀しみはさらに募り、胸が締めつけられる。できれば、三十一年前の宵宮の前日に時を戻したいものである。何とか前を向いて生きてほしいと祈る思いにさせられる一冊である。

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