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エレジーは流れない*三浦しをん

  • 2022/01/28(金) 06:57:07


海と山に囲まれた餅湯温泉。団体旅行客で賑わっていたかつての面影はとうにない。
のどかでさびれた町に暮らす高校2年生の怜は、複雑な家庭の事情、迫りくる進路選択、
自由奔放な友人たちに振りまわされ、悩み多き日々を送っている。
そんななか、餅湯博物館から縄文式土器が盗まれたとのニュースが……。


どこにでもあるような、かつてはにぎわった観光地に暮らす、ごくごく普通の人々のあれこれが描かれている。ことに、高校生たちの、何気ないおバカな日常や、気負ったところのない頭の中の描写が、絶妙である。何か特別なことがなくても、夢や希望にあふれていなくても、人は成長するし生きていける。そして、複雑な事情があろうとなかろうと、愛と思いやりに包まれているのだと、信じさせてくれる。それぞれが、その人にしかないものを持っていて、人と比べることなど何もないのだと、肯定感に包まれる一冊でもある。

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