fc2ブログ

7.5グラムの奇跡*砥上裕將

  • 2022/01/29(土) 16:34:43


国家試験に合格し、視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、野宮恭一の就職先は決まらなかった。
後がない状態で面接を受けたのは、北見眼科医院という街の小さな眼科医院。
人の良い院長に拾われた恭一は、凄腕の視能訓練士・広瀬真織、マッチョな男性看護師・剛田剣、カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣らと、視機能を守るために働きはじめる。
精緻な機能を持つ「目」を巡る、心温まる連作短編集。

『線は、僕を描く』で第59回メフィスト賞を受賞しデビュー。
同作でブランチBOOK大賞2019受賞、2020年本屋大賞第3位に選出された作者のデビュー後第1作。


緑内障・白内障・ドライアイと、眼科にはお世話になりっぱなしのわたしとしては、とても興味深い物語である。受診のたびに受ける検査が、ここまで精緻で芸術的とさえ思えるようなものであったことに、いまさらながらに驚き、視能訓練士のみなさんに対する感謝の思いを新たにした。次回の受信の時には、おそらくいままで以上に熱のこもった視線を送ってしまうことだろう。
いささか不器用とも言える新米視能訓練士の野宮が、勤務先の眼科の先生や同僚、そこに通ってくる患者たちとの関りで、一歩ずつ視能訓練士として独り立ちしていく日々の姿を見守っていると、周りのやさしさと、野宮の、ひとつのことを突き詰める熱意に、知らず知らず応援している自分に気づく。胸のなかがあたたかくやさしくなる一冊だった。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する