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線は、僕を描く*砥上裕將

  • 2022/02/13(日) 16:28:41


水墨画という「線」の芸術が、深い悲しみの中に生きる「僕」を救う。第59回メフィスト賞受賞作。


深い悲しみから本能的に自分を守るために、ガラスの部屋(と認識する)場所にこもり切っていた主人公の青山が、ある日偶然に出会ったひとりの老人との関りから、水墨画にのめり込み、ほんの少しずつ悲しみと向き合う術を体得し、凍った心を解きほぐせるようになるまでの日々が描かれている。水墨画という紙と墨の世界を通して、自らの内側を深く知ることで、広い世界を見ることができるようになるとは、なんということだろう。ラスト近くの「自分自身の幸福で満たされているわけじゃない。誰かの幸福や思いが、窓から差し込む光のように僕自身の中に映り込んでいるからこそ、僕は幸福なのだと思った。」という言葉が印象的である。圧倒的な肯定感のゆりかごに揺られているような心地よさを、読んでいる間中感じられる一冊だった。

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