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六つの村を越えて髭をなびかせる者*西條奈加

  • 2022/03/05(土) 07:05:11


直木賞作家の新たな到達点! 江戸時代に九度蝦夷地に渡った実在の冒険家・最上徳内を描いた、壮大な歴史小説。
本当のアイヌの姿を、世に知らしめたい―― 時は江戸中期、老中・田沼意次が実権を握り、改革を進めていた頃。幕府ではロシアの南下に対する備えや交易の促進などを目的に、蝦夷地開発が計画されていた。 出羽国の貧しい農家に生まれながら、算学の才能に恵まれた最上徳内は、師の本多利明の計らいで蝦夷地見分隊に随行する。そこで徳内が目にしたのは厳しくも美しい北の大地と、和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの姿だった。イタクニップ、少年フルウらとの出会いを通して、いつしか徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていく……。 松前藩との確執、幕府の思惑、自然の脅威、様々な困難にぶつかりながら、それでも北の大地へと向かった男を描いた著者渾身の長編小説!


史実に基づいた歴史物、しかも、題材が江戸中期の蝦夷のアイヌ、ということで、読み始めてすぐは、とっつきにくいのでは、と思ったが、そんなことは全くなかった。幼いころの元治(のちの最上徳内)の健気さと、知識欲の強さはみているだけで頼もしく、応援したくなる。そんな息子を大きな目で見守る父の存在も、とても好ましく、後の徳内の人物形成に大きな影響を与えているのだろうと思える。どこにいても、徳内は人に恵まれ、彼らとの縁をないがしろにしないから、さらに良い縁につながっていくのだろう。、絶えず湧き出す知識欲と、誰もが幸せに生きてほしいと願う真心に突き動かされた一生だったのだろう。読み応えがあり、胸の奥があたたかいもので満たされる一冊だった。

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