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ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ケ谷京介*川瀬七緒

  • 2022/03/11(金) 18:19:57


東京の高円寺南商店街で小さな仕立て屋を営む桐ヶ谷京介は、美術解剖学と服飾の深い知識によって、服を見ればその人の受けた暴力や病気などまでわかる特殊な能力を身につけていた。そんな京介が偶然テレビの公開捜査番組を目にする。10年前に起きた少女殺害事件で、犯人はおろか少女の身元さえわかっていないという。さらに、遺留品として映し出された奇妙な柄のワンピースが京介の心を捉える。10年前とは言え、あまりにデザインが時代遅れ過ぎるのだ。京介は翌日、同じ商店街にあるヴィンテージショップを尋ねる。1人で店を切り盛りする水森小春に公開捜査の動画を見せて、ワンピースのことを確かめるために。そして事件解明に繋がりそうな事実がわかり、京介は警察への接触を試みるが……。


美術解剖学に精通した仕立屋の桐ケ谷が、未解決事件の公開捜査のテレビ番組に映った、被害者が着ていたワンピースに目を止め、しわの寄り方や摩耗具合から、死因を推測し、情報提供したところから物語が始まる。商店街の店主仲間でもあるヴィンテージショップの小春の知恵も借りながら、10年も進展がなかった殺人事件が、いままでになかった視点からの情報によって、少しずつ真相に近づいていく。初めはうさん臭く思っていた警察も、次第に注目するようになり、少しずつ暗黙の協力体制ができていく感じが、好ましい。一着のワンピースや、釦などから、さまざまなことが判るというのが新しく興味深い。彼らが関わる別の事件の顛末も、もっと知りたくなる一冊である。

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