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おわかれはモーツァルト*中山七里

  • 2022/03/13(日) 16:40:59


2016年11月。盲目ながら2010年のショパンコンクールで2位を受賞したピアニスト・榊場隆平はクラシック界の話題を独占し人気を集めていた。しかし、「榊場の盲目は、自身の付加価値を上げるための芝居ではないか」と絡んでいたフリーライターが銃殺され、榊場が犯人として疑われてしまう。事件は深夜、照明の落ちた室内で起きた。そんな状況下で殺人ができるのは、容疑者のうち、生来暗闇の中で暮らしてきた榊場だけだと警察は言うのだ。窮地に追いやられた榊場だったが、そんな彼のもとに、榊場と同様ショパンコンクールのファイナルに名を連ねたあの男が駆けつける――! 累計160万部突破の『さよならドビュッシー』シリーズ最新刊。


現実の事件や人物も要素として絡めつつ、殺人事件に展開させていくのは著者の技だろう。目を閉じては本を読めないのだが、瞼を閉じて頭の中に音楽を響かせながら読みたい心地にさせられる。無粋極まりない警察の捜査との対比も際立つ。そして、いわずもがなではあるが、岬洋介が登場すると、いやがうえにも期待が高まる。一切気負うことなく、誰に対しても丁寧さを崩すこともなく、それでいて、有無を言わせぬ説得力があって、誰もが話を聴かずにはいられなくなる。音楽の素養だけでなく、幅広い懐の深さが、魅力的すぎる。実際に榊場と岬の供宴を聴いてみたいものである。何度でも読みたいシリーズである。

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