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捜査線上の夕映え*有栖川有栖

  • 2022/04/11(月) 18:25:17


「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」誕生から30年! 最新長編は、圧倒的にエモーショナルな本格ミステリ。
一見ありふれた殺人事件のはずだった。火村の登場で、この物語は「ファンタジー」となる。
大阪の場末のマンションの一室で、男が鈍器で殴り殺された。金銭の貸し借りや異性関係のトラブルで、容疑者が浮上するも……。
「俺が名探偵の役目を果たせるかどうか、今回は怪しい」
火村を追い詰めた、不気味なジョーカーの存在とは――。
コロナ禍を生きる火村と推理作家アリスが、ある場所で直面した夕景は、佳き日の終わりか、明日への希望か――。


コロナ禍で自由に出歩けないから、ちょっと気分転換に、というわけではないだろうが、本作はいつもといささか趣が違い、火村とアリスが捜査協力をお休みして旅に出かける場面がある。とはいえ、そこは火村アリスコンビ、ただの物見遊山であるわけがない。この旅で思わぬ収穫があるのだから、転んでもただでは起きない二人である。謎解き自体は、いささかトリッキーだと思える部分もないわけではないが、心情的には理解できる行動なので、よしとする。犯行動機も、ごく早い段階で、もしかすると・・・、と思わされるような描写もあって、やはりそうだったか、と納得させられた。子ども時代を過ごした場所の影響や、人間関係の複雑さを改めて思わされる一冊でもあった。

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