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五つの季節に探偵は*逸木裕

  • 2022/04/13(水) 18:18:10


“人の本性を暴かずにはいられない”探偵が出会った、魅惑的な5つの謎。

人の心の奥底を覗き見たい。暴かずにはいられない。わたしは、そんな厄介な性質を抱えている。

高校二年生の榊原みどりは、同級生から「担任の弱みを握ってほしい」と依頼される。担任を尾行したみどりはやがて、隠された“人の本性”を見ることに喜びを覚え――。(「イミテーション・ガールズ」)
探偵事務所に就職したみどりは、旅先である女性から〈指揮者〉と〈ピアノ売り〉の逸話を聞かされる。そこに贖罪の意識を感じ取ったみどりは、彼女の話に含まれた秘密に気づいてしまい――。(「スケーターズ・ワルツ」)

精緻なミステリ×重厚な人間ドラマ。じんわりほろ苦い連作短編集。


みどりは、いままでにいなかったタイプの探偵かもしれない。謎を解く動機が、依頼人のためでも事務所のためでもなく、ただただ人間の本質を知りたいという欲求だというのである。だから、謎が解けたあげくの調査結果が、依頼人を苦しめたり悲しませたりしても、躊躇なく報告する。その人間味がないとも見える対応は自覚していて、それでもやめることはできないのだった。そんな彼女が解いた謎の物語たちである。最後の章での出会いが、みどりにとっても、要にとっても、これからのためになることを祈らずにはいられない。この先の彼女たちをもっと知りたくなる一冊だった。

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