fc2ブログ

ペッパーズ・ゴースト*伊坂幸太郎

  • 2022/04/22(金) 07:05:56


少しだけ不思議な力を持つ、中学校の国語教師・檀(だん)と、女子生徒の書いている風変わりな小説原稿。
生徒の些細な校則違反をきっかけに、檀先生は思わぬ出来事に巻き込まれていく。
伊坂作品の魅力が惜しげもなくすべて詰めこまれた、作家生活20年超の集大成!


ニーチェの思想が下敷きになった物語である。ペッパーズ・ゴーストとは、劇場や映像の技術のひとつで、別の場所に存在するものを、観客の目の前に映し出す手法のことだそうである。それがわかると、物語の構成が見えてくる。中学教師・檀、教え子の書いた小説、別の教え子の校則違反から派生するその父親、という三つの視点でストーリーが進んでいくのだが、あるところで、現実が小説に取り込まれるように、三者が入り交じって、より複雑な展開になっていく。一瞬でも目を離せば、まったく別の場所に連れて行かれてしまうような心地である。まるで小説の登場人物になったようである。そもそも、檀のちょっと変わった――誰かの飛沫を浴びると、その人が見ている未来を束の間見ることができる――体質が、現実離れしているので、なおさら効果的になっている。描かれている問題は、どれもシリアス極まりないのだが、コメディを見ているような心が弾むような気持ちになるのはなぜだろうか。ペッパーズ・ゴースト効果と言えるのかもしれない。はらはらどきどきと深い悲しみを同時に体験できる一冊でもあった。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する