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壊れる心*堂場瞬一

  • 2022/04/26(火) 16:41:51


私は今、刑事ではない。被害者の心に寄り添い、傷が癒えるのを助ける。正解も終わりもない仕事。だが、私だからこそしなければならない仕事――。月曜日の朝、通学児童の列に暴走車が突っこんだ。死傷者多数、残された家族たち。犯人確保もつかのま、事件は思いもかけない様相を見せ始める。-文庫書下ろし-


警察官が主人公の物語である。とは言っても、刑事ではなく、犯罪被害者支援課という部署にスポットが当てられている。捜査はせず、被害者の気持ちに寄り添い、心の傷を少しでも癒して立ち直らせるための部署である。主人公の村野は、自らも事件の被害に遭って怪我を負い、捜査一課から志願して転課してきたという経緯があり、他の課員とは心構えからしていささか違っているせいか、マニュアル以上の対応をしがちではある。それがいいことなのかそうでないのかは、案件にもよるが、今回は、被害者家族にとっても、村野にとっても、他の課員たちにとっても、かなりきつい結果になったのは間違いない。被害者家族の身になってみれば、心情的には判らなくもないので、やりきれないことこの上ない。刑事課や交通課とのせめぎあいにももどかしさを感じる。正解がひとつではないだけに、さまざま考えさせられる一冊だった。

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