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ミカエルの鼓動*柚月裕子

  • 2022/06/07(火) 07:02:05


この者は、神か、悪魔か――。
気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。

大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。
あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。
「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。
大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。
天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。


大学病院を舞台に、手術支援ロボット・ミカエルとそれを操る心臓外科医の西條を主人公にする物語である。西條は、患者の負担も少ないミカエルを積極的に推進するが、ある時からじわじわと上層部の反応に変化が現れ、その後、開腹手術を得意とするドイツ帰りの真木が加わることで、流れが大きく変わり始める。欲得や名声、人間関係のしがらみなどに絡めとられ、医師の本分を見失う体制側に反発はあれど、自らを省みたときに、揺らぐ自信を感じずにはいられないことが、西條を愕然とさせる。神の手とも崇められる西條の本質は、存外ぶれやすい印象で、それが全面的に好印象につながらない一因でもあるのだが、人間臭くてリアルな感じもする。真木の本質を知った後の、二人の優秀な医師の協力関係も見てみたかった。読み応えのある一冊だった。

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