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星空の16進数*逸木裕

  • 2022/06/28(火) 17:46:22


私を誘拐したあの人に、もう一度だけ会いたい。色鮮やかな青春ミステリ。

ウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉は、”混沌とした色彩の壁”の前に立つ夢をよく見る。それは当時6歳だった自分が誘拐されたときに見た、おぼろげな記憶。あの色彩の壁は、いったい何だったのだろうか――その謎は、いつも藍葉の中にくすぶっていた。ある日、届け物を依頼されたという私立探偵・みどりが現れ、「以前は、大変なご迷惑をおかけしました」というメッセージと100万円を渡される。かつての誘拐事件しか心当たりのない藍葉は、みどりに誘拐事件の犯人・朱里の捜索を依頼する。当時、誘拐事件はわずか2時間で解決されていた。藍葉の思い詰めた様子と自身の好奇心からみどりは朱里を捜し始め、藍葉は”色彩に満ちた部屋”の再現を試みる。己の”個性”と向き合う藍葉と、朱里の数奇な人生を辿っていくみどりはやがて、誘拐事件の隠された真相に近づいていくが――。


母親にネグレクトされ、しかも誘拐された経験のある17歳の藍葉の物語なのだが、ひょんなことから関わることになった私立探偵のみどりの物語でもある。藍葉を誘拐した犯人・朱里を探すうちに、別の扉が次々に開かれるように新たな展開が生まれ、併せて藍葉の色彩に関する認識も深まっていく。そして、双方が相まって、事の真実に近づいていくのである。一見関係なさそうな事件十色。実はそこには特定の人にしかわからない深いかかわりがあったのである。藍葉とみどりと朱里、不思議な縁で繋がった彼女たちの人生の物語と言ってもいい一冊だった。

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