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0 ZERO*堂場瞬一

  • 2022/07/06(水) 10:15:42


「すごい原稿がある」――ベストセラー作家が死の間際に残した一言より始まった原稿捜索。しかしそれは、出版業界を揺るがしかねないパンドラの箱だった……「創作」の倫理をも問う問題作!


病死した作家・岩佐友は人と関わることを避け孤立していた。同郷で高校大学と同窓の作家である主人公の古谷悠が、唯一親しくしていた人物と言っても過言ではない。岩佐が亡くなった後、息子の直斗から、未発表のすごい作品がある、という話を聞き、編集者の未知とともに探すことになる。岩佐の評伝を書こうと、未発表作品を含む岩佐のことを調べて歩くうちに、古谷の純粋な興味もあって、調べは枝葉を広げ、岩佐と彼の後輩に関することへと進んでいく。読者も、古谷とともに未発表作品への興味、岩佐と後輩の関係に対する興味、孤立を選んだ岩佐本人への興味で、次の展開を早く知りたくて仕方なくなる。ラスト近くに配された、作品中の作品とも言える重苦しい章に、結局すべての謎が含まれていて、読後感を一層重くしている。岩佐にとって、人生とはいったい何のためにあったのだろうか。ずしりと胸に重い一冊である。

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