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夏鳥たちのとまり木*奥田亜希子

  • 2022/08/14(日) 18:23:20


中学教師の葉奈子は中二の夏、ネットの掲示板で声をかけてきた男のもとに身を寄せた。
そこは、母親から放置されていた葉奈子が逃げ込んだ場所だった。
だが、教え子の女子生徒が抱える秘密と、15年前の夏の記憶が重なったとき、ひとつの真実が立ち上がる――。
心に傷を負ったまま生きる中年男性教師の再起を絡めて描く、希望と祈りの物語。


未成年者誘拐というひとつの要素を芯に据えて、そこに行きつくまでの現実的な心の問題や、誘拐した側とされた側の意味付け方、周囲の反応、渦中にある者と客観視する者とのギャップなどなど、ただひとつの正解などない問題を描き、さらには、過去にさまざまな体験をしてきたひとりの人間としての教師の在り方をも絡めて、物語が進んでいく。誰もが、自分が抱える問題で飽和状態になり、ひととき羽を休める場所を求める。それが良いことなのか悪いことなのかは、その時にはわからず、そこから逃げ出せて時が経ってからやっとわかることなのかもしれない。胸がぎゅっと締めつけられるような一冊だった。

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