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マイクロスパイ・アンサンブル*伊坂幸太郎

  • 2022/08/18(木) 07:04:57


どこかの誰かが、幸せでありますように。
失恋したばかりの社会人と、元いじめられっこのスパイ。
知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり……。
ふたりの仕事が交錯する現代版おとぎ話。

付き合っていた彼女に振られた社会人一年生、
どこにも居場所がないいじめられっ子、
いつも謝ってばかりの頼りない上司……。

でも、今、見えていることだけが世界の全てじゃない。
優しさと驚きに満ちたエンターテイメント小説!

猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」でしか手に入らなかった
連作短編がついに書籍化!


あとがきを読んで、本作の作りに合点がいった。年に一度行われる音楽フェスで配られる読み物として始まったものだったのだ。それが、毎年続き、作品中の人々もひとつずつ年を取っていく。ストーリーの本体は、舞台が猪苗代湖という以外にはほぼ無関係だが、折々に挿みこまれる曲の歌詞は、フェスに参加するアーティストのものらしい。そして、猪苗代湖周辺では、社会人になりたての男が悩み、喜び、さまざまな体験をして歳を重ね、その足元には、男の知らない小さな世界で、スパイ戦争が繰り広げられている。二つの世界が、落とし物などで絶妙に交差するのが、価値観や見え方の違いもあって興味深く、ハラハラドキドキさせられる。どこで何が誰の役に立っているか判らない、そんなことをも思わされる。平凡でスペクタクルでやさしい一冊だった。

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