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おはなしの日*安達千夏

  • 2005/06/18(土) 11:33:42

☆☆☆☆・


 なぜ母に疎まれるのか。
 雑木林や山の斜面で、不安を抱えたまま日暮れまで冒険していたあの頃・・・。
 
 少女の日の孤独と悲しみを記憶の再生の中にうつしだす作品集。

 

 もっとも危険な場所だった家庭から逃れ、光射す世界を求める少女と少年
          ・・・・・「遠くからくる光」

 人は家や家族にどのような期待を寄せるのか。
 老人ホームで働く現在と、少女時代を交錯させて描く
          ・・・・・「おはなしの日」

 夫と初めて里帰りする車中で、母となった私によみがえる、
 殴られない子になりたいと考えていた頃の記憶
          ・・・・・「草の名を」

                            (帯より)


読み進むうちにどんどん胸が重く苦しくなる作品である。
外で何があろうと、そこだけではありのままの姿で安らげるはずの家が、家こそがどこよりも帰りたくない場所だなんて。
何より大切に思ってくれるはずの生みの親が、もっとも恐れるべき人だなんて。

同じような境遇に置かれたこどもたちや、そうして育ってきたおとなたちが、哀しい連鎖を自らの手で断ち切ってくれますように、と祈らずにはいられない。

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