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すぐそこの遠い場所*クラフト・エヴィング商會

  • 2005/08/04(木) 17:05:23

☆☆☆・・



 「この事典はね。見るたびに中身が変わってゆくのだよ。」
 クラフト・エヴィング商會の先代、吉田傳次郎がそう言い残した一冊の書物
 「アゾット辞典」。傳次郎の孫であり、現在のクラフト・エヴィング商會の主人が、
 書棚の隅から、この不思議な書物を見つけてきた。
 遊星オペラ劇場、星屑膏薬、夕方だけに走る小さな列車、エコー・ハンティング、
 ガルガンチュワの涙という蒸留酒、雲母でできた本、忘却事象閲覧塔・・・・・。
 アゾットには、謂れも始まりもわからないたくさんの事や物がつまっている。
 茫洋とした霧のなかにあるかのような、なつかしい場所アゾットの、
 永遠に未完の事典。つづきは読者の方それぞれに書いてほしくて、
 まずは一冊、お届けします。
               (見返しより)


『クラウド・コレクター/雲をつかむような話』とは姉妹作になる。
アゾットとは世界のことであり、世界とはすべてのことである。
事典とは、知っていることの欠片を書き記し、世界を思い描くことができるように手助けするものである。らしい。
出てくる事や物の価値観や定義や在り方は、ことごとくわたしたちが見知っているものとは違うのだが、なぜか違和感も不信感もなく納得させられてしまう。
遠くのことだと思っているとすぐ近く、自分の裡のことのようだったりしてドキリとさせられたりもする。
それぞれのアゾット=世界を、読者がそれぞれ胸の裡に描くことがこの永遠に未完の事典の存在意義なのかもしれない。

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