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嫌われ松子の一生*山田宗樹
- 2005/09/29(木) 17:17:25
☆☆☆☆・
九州から上京し二年目の夏を迎えた大学生・川尻笙は、
突然の父の訪問で三十年以上前に失踪した伯母・松子の存在と、
その彼女が最近東京で何者かに殺されたことを知る。
松子の部屋の後始末を頼まれた笙は、
興味本位から松子の生涯を調べ始める。
それは世間知らずの彼にとって凄まじい人生との遭遇だった。
殺人歴を持つ男やかつての友人との出会いを経て、松子が聖女ではなく
小さな幸せを求め苦闘した生身の女性であったことに気づいていく笙。
いつしか彼は、松子の彷徨える魂を鎮めるために、
運命の波に翻弄されつづけた彼女の人生の軌跡を辿っていく――。
(見返しより)
嫌われ松子というタイトルから、松子という女性はどれほど人々に忌み嫌われたのだろうかと思って読みはじめたのだが、その実、松子のことを心底嫌った人は一人もいなかったのではないかと思わせられた。
その晩年こそは周囲の人に得体の知れない薄気味悪さを感じさせていたかもしれないが、波乱万丈の人生のときどきでは憧れられ、求められ、愛されてさえいたのである。それならばなぜ著者はこんなタイトルをつけたのだろう。
思うにそれは、松子自身の胸の裡の切なく狂おしい想いだったのではないのか。
病弱な妹を第一に可愛がり、自分のことをほとんど省みなかった――と松子には思われた――父に、好かれたいのに、何をどうしても好かれないばかりか、良かれと思うことがどんどん悪い方に転がり泥沼に入り込み、父を落胆させる道ばかり歩んでしまう己自身を哀れむ気持ちの表れなのではないだろうか。
松子の歩いてきた人生と、笙が調べまわる松子の生き様とが交互に描かれ、どうして松子はここまで哀しい一生を送らなければならなかったのかと、どこか歯車の食い違った一瞬へ彼女を連れ帰ってやりたい想いにかられるのである。
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この記事に対するコメント
確かに松子を忌み嫌った人って、あの弟以外はいなかったですね。
どこにいっても松子は、その時その時の自分の信じる道をまっすぐに生きてきただけなんですよね、だから周囲も認めてくれる。
弱い女性ではあったけど。歯車が違ってしまった一瞬って、その時は未来のことなんか分からないだけに、怖いですよね。
ほんとうにその通りですね。
気を抜いて歯車を回せない心持ちになります。
松子の健気さが切ないです。