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箪笥のなか*長野まゆみ

  • 2005/10/02(日) 09:41:09

☆☆☆☆・



 長野まゆみの新境地が、いまここに拓かれる。
 古い紅い箪笥をめぐる不思議ワールド

 弟は少年のとなりへ布団を敷く。
 久しぶりに紅い箪笥のそばで眠るのを愉快がる。
 幼い日の晩のように見知らぬ人物が枕もとに佇つのを期待している。
 頭からすっぽりかぶる黒い雨合羽を着たその人物は、
 弟の耳に手のひらをあてた。電車の音が聞こえてきたと云う。
 小学生だった弟は、怖いだの気味悪いだのとは感じなかったらしい。
 ――本文より
                      (帯より)


連作短編集。
親戚の家から使われていない古い紅い箪笥をもらい受けてきたところからこの物語ははじまる。この物語のはじまりはここなのだが、実は箪笥による縁はめぐりめぐってもう遥か以前から続いているのである。この物語はそのほんの一端というところであろう。
幼い頃から不思議なものを呼び寄せてしまう性質の弟とその家族、紅い箪笥をもらい受けたわたし、実家の両親、わたしが借りる家の大家、などが少なからず箪笥との縁を持っている。偶然ではあるまい。
常識で推し量ることのできない不思議を、そこにあることとしてそのまま受け容れる登場人物たちがとても豊かに思えて羨ましくもある。
そしてなにより、食べもののことやら 小物のことやら 自然現象のことやらの描写に心が篭り、丁寧さが心地好い。漢字の使われ方ひとつにも並々ならぬ想いが篭っていることが窺い知れてうっとりさせられる。

 TB
ERIさん
ちえこあさん

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箪笥のなか [長野まゆみ]

箪笥のなか長野 まゆみ 講談社 2005-09-07親戚の家から不要になった古い「箪笥」をもらいうけてきた私。古い紅いその箪笥をめぐる、私と弟の物語です。初・長野さん。なんとも静かで不思議な物語でした。この世ならざるもの満載。読んでいる間に頭の中に展開される風景が、

  • From: + ChiekoaLibrary + |
  • 2005/11/28(月) 11:10:07

この記事に対するコメント

これは面白かったですね~!

ふらっとさん、TBとコメントありがとうございます。こういう位相がずれて違う世界にさまよいこんでしまう小説、大好きです。長野まゆみさんは癖の強い作家さんなので、私はけっこう当たり外れがあるんですよ。でも自分の世界をしっかり持っておられるところは尊敬します。

  • 投稿者: ERI
  • 2005/10/14(金) 22:46:29
  • [編集]

癖の強い作家なのですね

これからしばらく当たりも外れも含めて
愉しんでみようと思っています。
TB相当相性が悪いみたいですね^^;
webryブログでもすんなりいくところもあるんだけれど...。
謎です。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2005/10/15(土) 09:20:01
  • [編集]

私も漢字の使い方とか、感動しました!読めないのもありましたが…(汗)。

  • 投稿者: chiekoa
  • 2005/11/28(月) 11:10:53
  • [編集]

丁寧さが心地好かったですね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2005/11/28(月) 17:45:32
  • [編集]

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