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わたしたちの帽子*高楼方子

  • 2005/12/15(木) 17:28:43

☆☆☆☆・



わたし[たち]というところがキーワードだろう。
家を改築する間のひと月だけ母の友人の画廊のある古いビルの部屋を借りて住むことになったサキ。そこは暗闇に廊下が長く伸び、角を曲がると洞窟のような廊下が続いている迷路のような建物だった。
あまりの古さにちょっとがっかりして部屋のタンスを開けると、そこにはいろんな布を縫い合わせて作られた帽子がひとつだけ掛かっていた。まるでサキを待っていたかのように。サキは早速その帽子をかぶって建物の中を歩いてみると、緑色の丸いスカートを履いてサキのと同じ帽子をかぶった女の子と出会う。それが育子だった。そして二人は誰にも内緒であちこちの部屋をのぞき、建物の中を探検しながら遊ぶようになるのだった。
育子のことは誰にも言ってはいけないような、誰にも内緒にしておきたいような心持ちのサキだったのだが、帽子を取ると一緒に遊んだことも育子の存在もなんとなく薄れてゆくのがちょっと気になっていた。

あるきっかけから帽子のことも育子のことも謎が解けパズルのピースが嵌るようにすっきりとする。そこまででもとても心和むあたたかいお話なのだが、この物語にはまだ続きがあるのだ。そこから先こそがこれが子ども向けのお話である所以なのだろう。子どもだからこそ、二人だったからこそのこのラストなのだ。

カバーの絵は作中で画家の栗本みのりさんが描いた絵で、この物語を象徴している。

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