fc2ブログ

庭の桜、隣の犬*角田光代

  • 2005/12/20(火) 09:13:15

☆☆☆・・



 新・直木賞作家
 注目の著者が<夫婦>を描く傑作長篇小説

 「そうちゃん、私いくとこないんだよ」
 房子は言った。自分たちのやっていることの馬鹿馬鹿しさを、
 そう言って房子ははじめて実感した。
 家はある。三十五年ローンの家がある。
 居間にも食卓にも無駄なものがいっさいない、清潔で静かな家はある。
 なのに自分はほっつき歩き、宗二は四畳半を借りている。
 「阿呆か」宗二は、自分の馬鹿馬鹿しさには気づかない風で言う。
                       ・・・・・(本文より)

                                (帯より)


幼いころ天才的な記憶力を持つ少女としてテレビにも出演し 脚光を浴びたこともある房子は、いまは天才でも何でもない普通の女である。
宗二は、どうしようもない父親を反面教師として生きてはきたが 何もかもが面倒で責任を負いたくないと思っている自分を自覚しはじめている。
二人は結婚して夫婦なのだが、何もないがらんどうを生きているような気がしている。ゼロにゼロをいくら積み重ねても永遠にゼロであるように。
それでも時間は流れ、虚しく哀しくやるせない気持ちとは別に 淡々と日常はつづいてゆくのだったが...。

結婚生活の形とは、夫婦とは、などと一括りにしては語れないほど夫婦の数だけ 人の数だけ様々な現実があるのだと実感させられる一冊だった。



V
V

TB
*モナミ*

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

『庭の桜、隣の犬』 角田光代

幸せな家族のシンボル、庭の桜と、責任を負いたくないという象徴の、隣の犬。らしい。愛し合っていないわけでもなく、信じあっていないわけでもないけれど、微妙な距離感のある、夫婦。急に自分だけのアパートを借りたいと言い出した夫。それじゃぁ結婚してる意味なくない?

  • From: *モナミ* |
  • 2006/08/06(日) 13:01:12

「庭の桜、隣の犬」角田光代著、読んでみました。

   「庭の桜、隣の犬」角田光代著、読んでみました。   「角田 光代」の作品、5作目です。今回の「庭の桜、隣の犬」は登場人物の匂いが「空中庭園」と似ているような気がした、特に「ナシング坂」辺りの出だしがそんな感じ。「房子」と「宗二」の

  • From: 男を磨く旅 |
  • 2007/02/15(木) 07:53:51

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する