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みずうみ*よしもとばなな

  • 2006/01/27(金) 17:34:16

☆☆☆・・



母を亡くしたばかりの壁画描きのちひろが語る物語。
その頃住んでいた部屋の道路をはさんだ向かい側の窓辺越しにいつも会っている人と少しずつ近づき、とうとうその人はちひろの部屋に泊まるようになった。それが中島君だった。
彼は窺い知れないほど傷ついていて その傷痕と今でも闘っているような人で、ちひろは何もしてあげられないながらどんどん惹かれていく。

中島君の深い傷が新興宗教もどきの団体絡みだったりするところに多少時代性のようなものを感じなくもないが、著者の立つ場所は初めの頃からずっと変わらない、と思わせられる。良い悪いは別にして。
気持ちが膨らみすぎて器に入りきれずにぱんぱんになって溢れ出しそうなパワーを見せつけられ、それでいて逆に あまりにも静かで漣も立たない湖のように 内側のものを見せずに外側ばかり映してしまうようなそっけなさを感じさせられるのだ。ばななさんのどの作品にもそれは共通して言えるように思う。

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