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死体を買う男*歌野晶午

  • 2006/03/07(火) 17:35:22

☆☆☆・・



萩原朔太郎が大のミステリー好きだったことをごぞんじでしょうか。ポーやドイルの耽読に飽き足らず、探偵小説論を発表し、「前橋S倶楽部探偵本部」なるものを結成していたといいますから、そのマニア度は相当なものです。そして彼の友人の中に江戸川乱歩という男がいました。
尖鋭の詩人と当代一の探偵作家。二人はどこで遊び、どんな会話を交わしたのでしょう。
では、タイムマシンに乗って、二人の行動を確かめにいくことにしましょう。
  ――新書見返し「著者の言葉」より


自分の才能に限界を感じて引退した作家・細見辰時は、ある日ミステリ雑誌に江戸川乱歩を思わせる作品を見つける。懇意にしている編集者に問うと、新人作家の持ち込み作品だという。そこで、その新人作家に会い、この作品を手がけるいきさつを聞き出すことにしたのだったが...。

新人作家・西崎が書く『白骨鬼』は、警察官だった彼の祖父が実際に体験した事件を書き付けてあったものを ほとんどそのまま下敷きにして、祖父の部分を江戸川乱歩と萩原朔太郎に置き換えたような作品だった。
この『白骨鬼』と、細見と西崎の現在のやり取りが章ごとに交互に書かれているのである。乱歩の時代にタイムとリップしたかと思うと、現代の細見の歯切れの悪い苦悩の姿に戻ってくるのである。
事件に関する乱歩と朔太郎の推理も組み立てては壊れることを幾度も繰り返し、現実においても思いもかけない結末が待っているのだった。
著者は、過去の事件の真相に迫る醍醐味や、乱歩と朔太郎の絶妙なコンビについての興味ともに、いかにして読者の目を欺くかにその力を注いだと思われる。それが後の『葉桜の季節に君を思うということ』にまで通じているのだろう。

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