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残虐記*桐野夏生

  • 2006/03/31(金) 17:20:18

☆☆☆・・



誘拐。監禁。謎の一年間。
そして、25年後の「真実」。

暗くて狭いアパートの一室。
汚れた作業着の若い男。
女の子が一人――。

失踪した作家が残した原稿。
そこには、25年前の少女誘拐・監禁事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実が記してあった。
奔流のように溢れ出した記憶。
誘拐犯と被害者だけが知る「真実」とは・・・・・。
  ――帯より


物語は、失踪した作家の夫から 担当編集者に宛てられた手紙からはじまる。
そして、作家がその編集者に渡すように指示するポストイットガ貼られた原稿へと進んでいくのであるが、その原稿の冒頭には、服役を終えて出所してきた25年前の誘拐・監禁事件の犯人から作家の元に届いた手紙が載せられている。

想像を絶する出来事に目も耳も心さえ塞いで生きてきた作家の元に この手紙が届いたことで彼女の記憶は堰を切ったように溢れ出し、書かずにいられないほど突き動かされたのだろう。真相は犯人と被害者にしか共有できないとは言え、次第に事件の本質が解き明かされてゆくのである。しかし、原稿を残した作家の行方も安否も相変わらず知れないままなのである。
彼女は何を思い、どこへ行ったのだろうか。行き先には必然性があるはずだと思うのだが、物語ではそれは明かされてはいない。主人公のいま現在の生の気持ちはまったく判りようがないという珍しい物語である。作家自身が出てきたら、もしかするとまったく別の物語りになるのかもしれない。などとさえ思ってしまう。

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