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月への梯子*樋口有介

  • 2006/04/01(土) 19:44:14

☆☆☆・・



「知る」ことで、あなたは不幸になった。
真実を知ることは哀しみの始まり。なのになぜ、ひとは身を切られる痛みの中で、それを求めずにいられないのか。

ボクさんは四十代独身のアパート大家。少しとろいけれど、ご近所や店子の皆に愛されて幸福に暮らしている。
ある日、入居者の女が殺された。屋根の修理で梯子に上り、窓から死体を発見したボクさんは地面に落下。
病院で目覚めると、アパートの住人全員が失踪していた。
やがて彼は、自分を取り巻くものが善意だけではなかったことを知る。

ひとは、何を以って幸福になるのか。
「知る」ことの哀しみが胸に迫る書き下ろし長篇。渾身のミステリー!
  ――帯より


ボクさんは、多少知恵が遅れているが、アパートの住人たちと良好な関係を築き、日々感謝と愛に囲まれて平穏に暮らしていた。ある日壁塗りをしていて、窓から住人の一人の蓉子が殺されているのを発見し、梯子から転げ落ちて病院に運ばれる。
四日間の意識不明のあと目覚めてからのボクさんは、周りがいままでより明るくなったように感じ、頭も冴えていることに気づくのだった。
帯の惹句にもあるように、世の中が善意だけでなかったことはボクさんに哀しみを与えたかもしれないが、それ以上に余りある真心も知ることになったので、哀しいままではなかったのだとも思う。
そしてどんでん返しとも言えるラストへとつながるのだが、きっとこれはどんでん返しでも何でもなくて、約ひと月の間、ボクさんはボクさんの時間を、そしてボクさんのベッドの傍らで見守る人たちはその人たちの時間を過ごしていたのだ。そう思いたい。ボクさんはきっと、あたたかいものを心に持って旅立っていったのだ。

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