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鬼哭*乃南アサ

  • 2006/04/01(土) 20:32:04

☆☆☆・・



新直木賞作家の衝撃作!
これは殺人事件の被害者の死に至るわずか3分間の物語である。
  ――帯より


的場が気がついたとき、一瞬自分がどこにいてどうなっているのか思い出せなかった。酔って足を縺れさせ倒れたのだろうか。不自然に捻じ曲がった体勢で見上げる天井は、見慣れた実家のもので、自分は20年来の付き合いで唯一信頼できるといっていいほどの真垣と二人きりで飲んでいたはずだった。
次第に思い出してくると、自分は真垣にナイフで背中を突かれ、首を切られたのだった。
そして、高校受験のための家庭教師として行った、真垣徹の家で初めて彼に会ったときからいままでのことをくっきりと思い出しているのだった。心臓が動くのを止め、血液がすべて流れ出たあとも意識だけが真垣と自分のことを思い出しつづけ、的場は動かない躰で泣くことも身悶えることもできずに苦しむのだが、それはたった3分間のことなのだった。

結局、真垣がどうして的場を殺そうと思ったのか、いつから実行に移そうと思っていたのか、など 事件の成り立ちや核心にはまったく触れられていない。ただ、殺されて死んでゆく男の最期の3分間が描かれているのだ。そしてそれだけで、無神経な気持ちの押し付けや思い込みがどれほど人の神経を逆撫でしていたかということに思い至り愕然とするのである。的場にとっては唐突なことが、真垣にとっては悩みに悩んだ末のことだったのだろうから。

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