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大いなる聴衆*永井するみ

  • 2006/07/15(土) 17:36:31

☆☆☆・・

大いなる聴衆 大いなる聴衆
永井 するみ (2000/08)
新潮社

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脅迫状にはただ一言。
「ハンマークラヴィーアを弾け。
 しかも、完璧に」――。
予測不能! 驚愕の展開!

誘拐犯の目的は、カネではない?
突然変更されたプログラム。 紛糾する音楽祭。
苦悩するピアニスト。 2回目の本番が近づく・・・・・。
『ハンマークラヴィーア』、
このベートーヴェンの長大な難曲のどこかに、謎を解く鍵が――?
札幌とロンドンを舞台に、華麗に展開する音楽ミステリー。
  ――帯より


T芸術大学在学中から群を抜いて将来を嘱望されていた安積界(あずみかい)は、娘に自分の腎臓を移植しながらも結局娘を失い、移殖手術の前に娘に捧げるように弾いて聴衆を魅了したベートーヴェンの難曲『ハンマークラヴィーア』をそれきり封印した。
そしていま、札幌音楽祭でコンサートを開くことになった界は、直前になって演奏曲目を変更し、長いこと封印していた『ハンマークラヴィーア』を弾くのだった。 
何故? 準備も万端でないのに 何のために?

界の現在の本拠地であるロンドンと、音楽祭が行われる札幌と、二元中継さながらに物語りは進み、思ってもいなかった過去の事情が明らかにされてゆく。

音楽を演奏するものと、聴衆としてそれを享受する者。
その厳然たる線引きと、安積界、さらには師匠である東畑英世の音楽以外への鈍感さが招いた結果がこの事件だったのかもしれない。
界が自らの音楽性を取り戻したあとも、彼の無神経な鈍感さは修正されることはないように思われる。 また同じようなことが起こらないとは言い切れない気がする。

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