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防風林*永井するみ

  • 2006/07/19(水) 20:09:15

☆☆☆☆・

防風林 防風林
永井 するみ (2002/01)
講談社

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記憶が嘘をついたのか
冬の大地に埋めたはずの事件。
赤いコートの女が、封印された過去へ男を誘う。
気鋭の長編サスペンス!

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札幌を離れて17年経った今、再びここで暮らすことを決意して戻ってきた。
雪が深い。この一帯は原生林に近い混交林が続いている。雪を冠した木立の向こうに、楡の巨木が見えている。
あるべきものがそこにある。たったそれだけのことが、実に大きな慰めに、あるいは励ましになる。――(本文より)


芝園周治は、東京の大学へ進み そのまま東京の企業に就職したが、その会社が倒産するという不運に見舞われ十七年ぶりに故郷の札幌に帰ってきた。ガンに冒され 余命幾ばくもない母を見舞った病院で偶然再会したのは 元向かいの家に住んでいたアオイだった。彼女は 周治の母の最後の望みを叶えてあげようと持ちかける。それは、周治の母が帯広から逃げるように札幌に引っ越してくることになった原因となった男を探すことだった。

母の若いころの不貞の秘密を暴く物語かと思いきや、根っこは思いのほか深く、幼かった周治にとって あまりに衝撃的な出来事へと時間を遡ることになるのだった。

同じことを体験したと思っていても、受け取り方は人それぞれだろう。そして、あまりに衝撃的なことに出会うと、その記憶そのものまで封じ込めてしまおうとするのが人間なのかもしれない。そうなるともはや、同じ体験をしたとも言えなくなってしまうのである。
真相はあまりに哀しいが、まだ終わってはいないのかもしれない。

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