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火のみち 上・下*乃南アサ

  • 2006/09/21(木) 13:05:38

☆☆☆☆・

火のみち (上) 火のみち (上)
乃南 アサ (2004/08/04)
講談社

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罪の、意味がわからない。
たった1人の妹を守るために、人を殺した男。心を焦がす、怒りと憎しみを、「土の冷たさ」だけが鎮めた。
時間が止まった刑務所の10年。自由。希望。命の実感。そのすべてを奪われ、赦されることもない男がたどる、壮絶な人生。


火のみち (下) 火のみち (下)
乃南 アサ (2004/08/04)
講談社

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奇跡を生むのは、炎。
空洞が埋まらない心。それが欲したのは、「天空の色」。触れたい、手に入れたい。男は魔力に取り込まれる。
古(いにしえ)の焼物・汝窯(じょよう)。奇跡のような色。いっさいの感情も、作為もゆるさない、「完全」。その奇跡を再現することが、自分の運命だと信じた。


昭和8年、大阪で生まれ、満州で終戦を迎えた一人の男の壮絶な一生の物語。
上巻では、戦争中に父と兄を亡くし、終戦後日本へ引き上げてくる船の中で幼い妹を亡くし、一家を養うために身を賭して働きに行く姉を見送り、病弱な母を看取り、ついには売られようとする幼い妹のために人を殺した南部次郎の、刑務所での十年の日々と出所して曲がりなりにも世間で生きていけるようになるまでを軸に、下巻では、雨上がりの青空の色だという中国の古の焼き物「汝窯」にのめりこんでいく次郎の姿を軸に、彼と否応なくかかわっていく人々の姿が描かれている。
時代背景や出来事は現実そのままに この物語の背景として語られ、まさに南部次郎という男が苦悩しながらそこに生きているかのような現実感を読者に与えている。誰をも心の底から信じずに生きてきた男の心底からの叫びが最後の最後に胸に痛い。

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