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コンビニ・ララバイ*池永陽

  • 2006/09/30(土) 17:15:19

☆☆☆・・

コンビニ・ララバイ コンビニ・ララバイ
池永 陽 (2002/06)
集英社

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お人好しで商売気のない店長と、訳ありの店員さんにお客さん。みんな何かを抱えて生きている。何かを求めてやってくる。それぞれのはぐれた愛が切なくて、まぶしくて──小さなコンビニの物語。


登場人物は、一人息子を轢逃げで亡くし、ショックを受けた妻といつも一緒にいたいと、チェーン店ではない小さなコンビニ「ミユキマート」をはじめたが、ほどなく妻をも交通事故で失い、やり切れぬまま無気力にコンビニの店主でいつづける幹郎。その代わりに店を取り仕切る 妻・有紀美の友人でもあった治子。そしてコンビニにやってくる客たち。
そんな 有紀美曰く「賑やかだけど乾いている」コンビニに集まる人たちとちっぽけなコンビニ店主・幹郎の「乾いていない」七つの連作。
以前は妻に苦労もかけたが、失ってからその大切さを痛感している幹郎の力の抜け具合と、彼のことを想う気持ちのやり場を 店を守ることに見つけている治子のしっかり者具合が、切なくもありコミカルでもあってコンビの味を出している。
甘いところはたくさんあるのかもしれないが、読んでいてほっとする物語だった。大切なものを大切だと認めるのには、遅すぎることなどないのだと、それを認めるところから何かが始まるのだと思わせてくれる。
幹郎にも新しいあすが始まりますように。そしてそれでも「賑やかでちょっぴりあたたかな湿り気のある」ミユキマートでありつづけてくれますように。

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