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その街の今は*柴崎友香

  • 2006/12/12(火) 17:34:37

☆☆☆・・

その街の今は その街の今は
柴崎 友香 (2006/09/28)
新潮社

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わたし、昔の大阪の写真見るのが好きやねん。その、どきどきの中毒みたいな感じやねん-。過ぎ去った時間の上に再生し続ける街の姿に、ざわめく28歳の気持ちを重ねて描く、新境地の長篇。


28歳の歌子は、OLをしていた会社が潰れ、いまはシュガーキューブというカフェでアルバイトをしている。決まった恋人もなく、ときどき合コンに出かけてはよくわからない時を過ごしているのだった。仕事は、探さなくてはならないと思いながらも、このままが気楽でいいんだけど、とも思ったりする。そして歌子は、自分の知らない昔の大阪の写真を見るのが好きなのだった。頭の中に現在のその場所の様子をはっきりと思い浮かべることのできる場所なのに、そこは自分の知らない、そして自分のいない世界であることの不思議さと、それに出合ったときのどきどき感がたまらない。
いつもながらに大阪弁の柴崎作品である。地元の方が読めば、たちどころに手に取るように風景が浮かんでくることだろう。修学旅行くらいでしか訪れたことのないわたしが読んでも、その場の空気感に身を置いているような心地である。おそらくニュアンスは掴み切れはしないのだろうと思うが、ひととき大阪の女の子になった気分に浸れる一冊である。

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おいしい本箱
今日何読んだ?どうだった??
とんとん・にっき

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その街の今は 柴崎友香 新潮社

柴崎さんは、大阪の人なんだわ・・。それを強烈に感じた、この作品。大阪者には、非常にアピールする内容やなあ、と思います。

  • From: おいしい本箱Diary |
  • 2006/12/14(木) 01:26:13

「その街の今は」 柴崎友香

その街の今はposted with 簡単リンクくん at 2006.12.16柴崎 友香著新潮社 (2006.9)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る

  • From: 今日何読んだ?どうだった?? |
  • 2006/12/18(月) 08:53:57

柴崎友香の「その街の今は」を読む!

先月16日、「芸術選奨に作家の川上弘美さん、歌手の森山良子さんら」というタイトルで、文化庁が2006年度の芸術選奨文部科学大臣賞と同新人賞の受賞者を発表したことを、新聞が報じていました。そこで僕が興味を持ったのは、文学部門の文部科学大臣新人賞に選ばれた柴

  • From: とんとん・にっき |
  • 2007/04/05(木) 16:42:03

この記事に対するコメント

はい。地元なので、その風景をたっぷり楽しみました。ミナミの街の独特の雰囲気を書く筆致はさすがです。そのよく知っている街の現在と過去の時間や空間が重なり合うような、不思議な味わいの物語でした。

  • 投稿者: ERI
  • 2006/12/14(木) 01:29:25
  • [編集]

なんて羨ましいんでしょう。
柴崎さんの書かれるものって、ただ日常の情景を描写しているような粗筋のないものが多いのだけれど、なぜか胸の奥をくすぐられるのです。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2006/12/14(木) 07:11:05
  • [編集]

大阪の繁華街からちょっと外れたところを散策してみたくなるようなお話でした。
この本を片手に大阪に行くのもいいかもしれません。

  • 投稿者: まみみ
  • 2006/12/18(月) 08:55:32
  • [編集]

ウタちゃんにどこかで出くわしそうですね。

  • 投稿者: ふらっと
  • 2006/12/18(月) 13:38:37
  • [編集]

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