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闇の底*薬丸岳
- 2006/12/16(土) 17:55:05
☆☆☆☆・ 少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が起きるたびに、かつて同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって発見される。身勝手な欲望が産む犯行を殺人で抑止しようとする予告殺人。狂気の劇場型犯罪が日本中を巻き込んだ―。 闇の底
薬丸 岳 (2006/09/08)
講談社
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絶対に捕まらない―。
運命が導いた、哀しすぎる「完全犯罪」。
『天使のナイフ』の薬丸岳が描く、欲望の闇の果て。江戸川乱歩賞受賞第一作。
日高署で女児殺害事件の捜査をする長瀬、坂戸署で性犯罪経験者の殺人事件の捜査をする村上、そして、過去に幼女を陵辱して殺した者たちを次々に殺害するもうひとりの「男」の視点が入れ替わりながら語られる。
語られ始めた事々はどこでどう繋がるのか。「男」はいったい誰なのか。
読者の疑問を引きずったまま日高署と坂戸署の事件は思いがけないひとつの方向へと向かってゆく。そして、長瀬は坂戸署の事件に借り出され、村上と行動を共にすることになる。
長瀬は24年前妹を殺され、その原因の一端が自分にあったかもしれない重みをいまも胸に抱えながら 自分が警察官でいる意味を自身に問いながら捜査に参加している。
「男」はサンソンと名乗り、幼女が陵辱され殺される事件が起きるたびに 過去に同じ罪を犯したものを殺す、という声明文を警察やマスコミに送りつける。そしてなぜか、長瀬とコミュニケーションをとろうとする。「男」は誰なのか、目的は何なのか・・・・・。
わたしも村上と同じ思考過程をたどってサンソンの目星をつけたのだが、見事にやられてしまった。真犯人は衝撃的だったし、「完全犯罪」の意味がこんな形でわかったこともショックだったが、ほんとうに彼ひとりが真犯人なのか・・・という思いもまたどこかで胸をよぎるのである。協力者?ミスリードされたあの人が?だが何故? 思い過ごしだろうか。
長瀬は結局警察を辞めることになるのだが、彼のこれからも大いに気にかかる。おかしなことを考えなければよいのだが。
ひとつの事件に関わる人々の立場による感情の矛盾についても考えさせられた一冊だった。
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闇の底 薬丸岳
装幀は多田和博。カバー写真はgettyimages。「天使のナイフ」で第51回江戸川乱歩賞受賞後の第一作。小学生の時、置いてきぼりにした妹を殺された過去を持つ刑事、長瀬一樹は女児殺害事件に取り組みます。五歳の娘を持つ刑事
- From: 粋な提案 |
- 2006/12/17(日) 02:36:34
闇の底
************************************************************ 少女を犠牲者とした痛ましい性犯罪事件が起きるたびに かつて同様の罪を犯した前歴者が首なし死体となって 発見される。身勝手な欲望が産む犯行を殺人で 抑止しようとする予告殺人。狂気の劇場型犯罪が 日本
- From: 気楽に♪気ままに♪のんびりと♪ |
- 2007/02/27(火) 19:41:18
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この記事に対するコメント
社会問題となっていることをあつかって、深く考えさせられる物語でしたね。
いろんな登場人物の心境が伝わってきました。
リアルな描写で、読んだ後に、苦いものが残る感じもありました。
ほんとうに、立場によってこれほど心境もさまざまであることが改めて伝わってきましたね。
なかなか正体のわからない「男」の存在の不気味さが核になって一気に読ませられました。