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地上八階の海*角田光代

  • 2006/12/21(木) 19:02:16

☆☆☆・・

地上八階の海 地上八階の海
角田 光代 (2000/01)
新潮社

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母は目に見えない何かに怯えはじめ、兄嫁はとめどもなくしゃべり続け、赤ん坊は鬱陶しい泣き声を響かせ、昔の男はストーカーになった。癒しようのない孤独を抱えた私の毎日を描く表題作ほか、1編を収録。


表題作のほか、「真昼の花」

「真昼の花」は、母を亡くし、ただ一人の兄はふらっと家を出て外国へ行ったきりたまにしか帰ってこない。ひとりになった<私>は気ままにあちこちの国を歩き回っている。行き当たりばったりにどこかを目指し、ときにはしばらく腰を据えてみたり、なんとなく無為な時を過ごしている。これといって行きたい場所があるわけでもなく、したいことがあるわけでもなく、でもなんとなく兄もここにいたことがあるかもしれない などと思ってみたりする。その場その場で知り合った人たちと束の間の交流を愉しんだり、怪しげな横道に入り込んで その国の惨状を目の当たりにしたりもする。それでも足は家に向かず、ずるずると旅を続けている。

片や異郷の地、片や日本が舞台であるが、どちらも言いようもなく孤独である。周りに人がいるからこそ際立つ孤独とも言えるかもしれない。
異国にあっては、どうあがいてみても自分は観光客以外の何者にもなり得ない孤独感が賑わいの中に浮かび上がってくるし、親兄弟の賑やかさの中にあっても ここが自分の居場所ではない、自分の居場所がどこにもないという孤独感に周囲の音が消えてしまいそうな居ても立ってもいられない心地になったりする。

おそらくは、ひとりひとり誰もが持つ孤独感なのだろうが、何かを失ったり、何かに躓いたりした折にふっと際立って輪郭を持ってしまうのだろう。読んでいてちくりと刺されるような一冊である。

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