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月夜の晩に火事がいて*芦原すなお

  • 2006/12/25(月) 18:42:37

☆☆☆☆・

月夜の晩に火事がいて 月夜の晩に火事がいて
芦原 すなお (1999/05)
マガジンハウス

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  「月夜の晩に
  火事がいて
  水もってこーい
  木兵衛さん
  金玉おとして
  土(ど)ろもぶれ
   ひろいに行くのは
  日曜日」

…この予告状から前代未聞の「おもしろこわい」事件が始まった。
奇想天外な展開、明るくユーモラスな会話に垣間見られる人間存在の深淵。深層心理ミステリー。『鳩よ』連載に加筆・修正。


妻を事故で失い、心情的に自分を罰するが故に気力を失くしている43歳の私立探偵・山浦歩(通称:ふーちゃん)は、故郷の幼馴染・志緒の頼みで これから起こるかもしれない事件を解決するために故郷に帰った。
そして、なにをすることもできないまま、わらべ唄になぞらえた予告状のとおりの殺人事件が起こってしまい、事件に巻き込まれながらも ジグソーパズルのピースをひとつひとつはめ込むように 要素をつなぎ合わせていくと、そこに現れたのは...。

讃岐弁というのだろうか、方言がとても好ましい。風景が目の前に一瞬にして開ける心地がする。そして、久しぶりに集まった幼馴染たちの会話のばからしさや他愛のなさや子どもっぽさに クスリと笑わせられもする。なんとも味があるのである。イミコさんの独特の言い回しも然りである。
事件自体は、旧家のしがらみと、山浦の幼児体験が元になり 更に堆積してきた心のなかの澱のようなものの呻きとがシンクロしたような不思議な揺らぎのなかで起こり 謎解きがされていくのだが、法によって真犯人が裁かれる、という意味での解決ではまったくない。関係者が納得しさえすればそれでいい、というような終わり方なのである。そしてそれこそがもっともこの事件の終わりにふさわしいのだとも思わされるのである。
映画で見たら趣があるだろうと思わせられる一冊だった。

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