FC2ブログ

冬至祭*清水義範

  • 2007/01/18(木) 07:36:33

☆☆☆☆・

冬至祭 冬至祭
清水 義範 (2006/11)
筑摩書房

この商品の詳細を見る

戸田直人はKSテレビの報道局プロデューサーである。仕事は順調だ。気の休まる暇もないが毎日充実している。家庭は妻今日子に任せてあるので安心だ。ところが、息子拓人が学校へ行くことが出来なくなっていた。不登校、昼夜逆転の生活、リストカット。責任を感じた今日子も様子が変になっていく。家庭が壊れはじめる―。
父と息子、そして家族の再生の物語。


仕事人間の夫は毎日のように深夜に帰宅し、家族と関わることはほとんどない。
有名大学を出て有能な編集者として働いていた妻は、出産によって仕事を辞めざるを得ず、息子に希望を託す。
現代日本には珍しくもなんともない よくある家庭の状態と言えるかもしれない。だが・・・・・。
表面を取り繕ってなんとか保っていた家族という形が、ある日小さな綻びを見せ、堰を切るように崩れ始める。それでも初めは、見なかったことに、気づかなかったことにしようとする。自分に責任があることを認めたくない、これまで自分がしてきたことが間違いだと認めさせられるのが怖い。そんな親の身勝手さがますます子どもを追い詰めていく。

夫であり父である戸田の視点で書かれた物語なので、戸田が格好良すぎる感はあり、妻・今日子の胸の内の叫びがまだまだ充分に表わされてはいないようにも思えるが、それでもなお、子を持つ親として惹きつけられ、重く受け留めざるを得ない物語だった。

テレビマンの戸田が、深夜の渋谷をうろつく中学生の女の子たちの生態の取材に立ち会ったときに胸に抱いた思いが印象的であり 衝撃的だった。

 なぜ家に帰らないのか。それは、帰りたい家ではないからだ。この子たちの親は、この子たちを愛してはいない。親子の間に愛がないという意味で、その家は壊れているのだ。
 あんたなんかもう知らない、というふうにこの子たちは見捨てられているのだ。どうしてそんな親のところへ帰りたいだろう。
だから一晩中渋谷にいなければならないのだとしたら、そんな不憫な話があるだろうか。
 美友が持っている携帯電話が、悲しいものに見えてきた。それを親に持たされているのだ。
 それを持っていれば、どこにいても親とは連絡がつくんだから、という口実のもとに、この子たちは持たされ、そして捨てられている。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する