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古本食堂*原田ひ香
- 2022/08/01(月) 07:00:54
かけがえのない人生と愛しい物語が出会う!
神保町の小さな古書店が舞台の
絶品グルメ×優しい人間ドラマ
大ベストセラー『三千円の使いかた』『ランチ酒』の著者による熱望の長篇小説
美希喜(みきき)は、国文科の学生。本が好きだという想いだけは強いものの、進路に悩んでいた。そんな時、神保町で小さな古書店を営んでいた大叔父の滋郎さんが、独身のまま急逝した。大叔父の妹・珊瑚(さんご)さんが上京して、そのお店を継ぐことに。滋郎さんの元に通っていた美希喜は、いつのまにか珊瑚さんのお手伝いをするようになり……。カレーや中華やお鮨など、神保町の美味しい食と心温まる人情と本の魅力が一杯つまった幸せな物語。
神保町の古書店が舞台。それだけでわくわくするが、そこに神保町グルメが加わって、お腹もぐうぐう反応する。国文科の院生の美希喜(みきき)と大叔母の珊瑚さんの視点が入れ替わりながら物語は進んでいくが、圧倒的な存在感なのは、もちろん、ここ鷹島古書店の元店主で故人の滋郎大叔父である。お店の先行きがまだ曖昧なのもあって、滋郎さんの尺度がまだまだ生きていて、ご近所さんたちも含めて、その人となりを慈しんでいたりする。踏み込み過ぎず、突き放し過ぎない絶妙な人間関係が心地好い。それぞれに、悩みや不安を抱えながら、何かによりどころを求めて日々生きる人たちの、やさしさにあふれた一冊だった。
マスカレード・ゲーム*東野圭吾
- 2022/07/30(土) 18:12:15
解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。
共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。
捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。
警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する――。
累計495万部突破シリーズ、総決算!
新田刑事、またもやホテル・コルテシア東京に潜入、しかも、あの山岸も赴任先のロサンゼルスから呼び戻されて――。ということになれば、いやがうえにも期待値が上がる。今回は、被害者が誰かわからず、加害者もはっきりはしていないなか、渾身の警備体制が敷かれるのである。だが今回は、警察側も一枚岩とはいかず、正義感の塊のような女性警部の捜査方針と、新田の考えとは相いれない部分もある。警察内部のいわば身内と、ホテルサイドとの板ばさみ的な葛藤の面白さも加わり、さらに興味を掻き立てられる。そして、罪と罰の重さや、本当の償いとは何か、理不尽に身内を奪われた遺族の心の持ち方等々、注目すべき点がたくさんある。疑う警察と信じるホテルという、人に向き合う姿勢の違いも、いままで以上に際立っているのも興味深い。総決算と謳われているので、続編はないものと思われるが、この先もちょっぴり見てみたい気がしなくはないシリーズである。
深夜0時の司書見習い*近江泉美
- 2022/07/28(木) 16:41:47
不思議な図書館で綴られる、本と人の絆を繋ぐビブリオファンタジー。
高校生の美原アンが夏休みにホームステイすることになったのは、札幌の郊外に佇む私設図書館、通称「図書屋敷」。不愛想な館主・セージに告げられたルールを破り、アンは真夜中の図書館に迷い込んでしまう。そこは荒廃した裏の世界――“物語の幻影”が彷徨する「図書迷宮」だった!
迷宮の司書を務めることになったアンは「図書館の本を多くの人間に読ませ、迷宮を復興する」よう命じられて……!?
美しい自然に囲まれた古屋敷で、自信のない少女の“物語”が色づき始める――。
完全に苦手な部類のファンタジーだった。ただ、SNSの匿名性の怖さや、人の口から出た言葉の棘が与える深い傷、それによってずっと苦しみ傷ついている人の存在、などなど、現実の厳しさを何とかしようとする主人公の体当たり的な頑張りは嫌いではない。好きな人はものすごく物語に入り込んで楽しめる一冊だとは思う。
よろずを引くもの お蔦さんの神楽坂日記*西條奈加
- 2022/07/26(火) 17:56:39
頼れるお蔦さんの元には、みんなの相談事が集まってくる・・・・・・
もと芸者のおばあちゃんと孫の望が、秋の神楽坂で起こる事件を見事に解決!
直木賞作家・西條奈加が贈る大人気シリーズ最新短編集!
多発する万引きに町内会全体で警戒していた矢先、犯人らしき人物をつかまえようとした菓子舗の主人が逃げる犯人に突き飛ばされて怪我をしてしまった! 正義感に駆られる望と洋平は、犯人の似顔絵を描こうと思い立つが……商店街を巻き込んだ出来事を描いた「よろずを引くもの」を始め、秋の神楽坂を騒がす事件の数々を収録。粋と人情、そして美味しい手料理が味わえる大好評シリーズ、待望の最新作!
お蔦さんの元には、きょうも厄介事が向こうからやってくる。それに伴って、お蔦さんの手足となって働くのは、孫の望であるのも相変わらずである。万引き犯や亡くなった片腕、お蔦さんも緊張を隠せない置屋の「おかあさん」の来訪、いなくなった野良猫、金のうさぎ、などなど、他ではあまり見られないような厄介事が満載である。神楽坂のご近所の人間関係も絡めつつ、関わった人々の心も解きほぐしてしまうお蔦さんなのであった。次も愉しみなシリーズである。
わたしが消える*佐野広実
- 2022/07/23(土) 19:16:52
第66回江戸川乱歩賞受賞作!
綾辻行人氏(選考委員)、推薦。
「序盤の地味な謎が、物語の進行とともに厚み・深みを増しながら読み手を引き込んでいく」
元刑事の藤巻は、交通事故に遭い、自分に軽度認知障碍の症状が出ていたことを知り、愕然とする。離婚した妻はすでに亡くなっており、大学生の娘にも迷惑はかけられない。
途方に暮れていると、当の娘が藤巻を訪ね、相談を持ちかけてくる。介護実習で通っている施設に、身元不明の老人がいる、というのだ。その老人は、施設の門の前で放置されていたことから、「門前さん」と呼ばれており、認知症の疑いがあり意思の疎通ができなくなっていた。
これは、自分に課せられた最後の使命なのではないか。そう考えた藤巻は娘の依頼を引き受け、老人の正体を突き止めるためにたった一人で調査に乗り出す。
刻一刻と現れる認知障碍の症状と闘いながら調査を続ける藤巻は、「門前さん」の過去に隠された恐るべき真実に近づいていくーー。
残された時間で、自分に何ができるのか。
「松本清張賞」と「江戸川乱歩賞」を受賞した著者が描く、人間の哀切極まる社会派ミステリー!
自らの認知症の疑いに悶々としながら、娘の頼みで、介護施設の門前に遺棄された認知症の老人の身元を調べる、元刑事の藤巻の姿が描かれている。門前さんと名づけられた人物の身元を探るほどに、過去の怪しさが浮き彫りにされ、警察機構や政治家にまで及ぶ疑惑が明らかにされていく。誰が誰を利用し、利用されたのか。闇が深すぎて背筋が凍る。似たようなコントロールはおそらく日々何らかの形で行われているものと思われ、何を信じればいいのか疑心暗鬼に囚われる一冊でもある。
とは言え、藤巻家の安寧は保たれたと言っていいかもしれないのは、一筋の光明である。
見えない轍*鏑木蓮
- 2022/07/21(木) 06:19:52
京都を舞台とした、本宮慶太朗シリーズ第1弾!
ひとり暮らしの女性・小倉由那がある日、自ら命を絶った。由那の最後の姿をみた女子高生・棚辺春来は「由那は自殺なんかしていない」と訴える。
心療内科医・本宮慶太郎は、彼女の訴えを聞き、独力で由那のことを調べ始める。
それは、大きな悲劇へとつながる第一歩となる――。
探偵役が心療内科の医師、というのは初めてのパターンではないだろうか。クライエントの悩みを解決するために、きっかけとなった事件を調べるというのは、業務の範囲なのか、逸脱しているのか、微妙なところだが、クリニックの経営的には不安が大きい。とはいえ、医師の本宮の患者に寄り添う姿勢と、心療内科ならではではないかと思わされる人当たりのやわらかさと穏やかさ、そして洞察力の深さには好感度が高い。謎を解くことが、結果としてクライエントの心を救うことにつながるというのは、新たなミステリの愉しみかもしれない。長く続くシリーズになってほしい一冊である。
密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック*鴨崎暖炉
- 2022/07/18(月) 18:12:22
第20回『このミステリーがすごい! 』大賞・文庫グランプリ受賞作!
「連発される密室トリックの中ではドミノの密室がイチ推し。本格ミステリ刊行ラッシュの中に割って入るだけの力はありそうだ」大森 望(翻訳家・書評家)
「密室殺人づくしの趣向が楽しい。主役の二人をはじめキャラ設定もいかにもマニアックかつ軽快」香山二三郎(コラムニスト)
「これでもかというくらい密室ネタを盛り込んで、遊び心たっぷり。探偵役となる少女も謎めいていて魅力的だ」瀧井朝世(ライター)
「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」との判例により、現場が密室である限りは無罪であることが担保された日本では、密室殺人事件が激増していた。
そんななか著名なミステリー作家が遺したホテル「雪白館」で、密室殺人が起きた。館に通じる唯一の橋が落とされ、孤立した状況で凶行が繰り返される。
現場はいずれも密室、死体の傍らには奇妙なトランプが残されていて――。
密室が何より好きな主人公と、かつて前代未聞の密室を作り、父を殺害した少女のコンビ(と言えるのかどうかはさておき)が、いままでにない設定で興味深い。犯人が誰かよりも、密室をどうやって破るかの方に重きを置くという姿勢も新しい。ただ、会話のリズムがどうも個人的な好みからは外れているせいかしっくりこないので、何となく物語にのめりこめないのが残念ではある。ラストに含みを残しているところから、次があるのかもしれない。さまざまな密室の破り方を楽しめる一冊ではある。
病は気から、死は薬から 薬剤師毒島花織の名推理*塔山郁
- 2022/07/15(金) 16:23:19
累計12万部突破の人気シリーズ最新刊!
薬剤師の毒島さんに憧れる爽太の前に、彼女の恩人だという男性・宇月が現れた。薬のプロである毒島(ぶすじま)さんと漢方医学のプロである宇月は、その知識でトラブルを鮮やかに解決していく。記憶喪失の女性が高価な薬を捨てたのはなぜ?悪質なマルチ商法をどう止める?二人の親密さに焦る爽太。そんななか、職場の先輩・馬場さんが、有毒植物ばかりを育てる怪しい女性と婚約すると言い出し......。
毒島さん、今回は、恩人男性宇月さんとコンビで探偵役である。宇月さんも、なかなか厳しい経験をしてきた人物のようで、爽太は脅威を感じはするが、毒島さんはいつも通りの冷静沈着加減である。宇月さんが詳しい漢方医学を絡めた謎解きが、興味深く、西洋医学との根本的な考え方の違いがよく分かった。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしである。最後の最後に、ほんの少しだけ、爽太と毒島さんの距離が縮まったか、と思わされるが、この二人のことである、このままスムーズにはいかないだろう、たぶん。次の展開が愉しみなシリーズである。
団地のふたり*藤野千夜
- 2022/07/13(水) 16:30:39
50歳、独身、幼なじみ。
小さな恥も誇りも初恋もほとんど全て知っているから、のほほんと気楽でいい。
話題書『じい散歩』の著者・藤野千夜 最新作
五十歳を迎え、生家である団地に戻った幼馴染の二人、なっちゃん(桜井奈津子)とノエチ(太田野枝)。売れないイラストレーターのなっちゃんは今やフリマアプリでの売り上げが生計のメインで、ノエチは非常勤講師の仕事のストレスを日々友に吐き出す。保育園からの付き合いの二人がゆるく、のんびり毎日を過ごす。
友情をユーモアと温かさたっぷりに描いた傑作。
一度は出たものの、実家に戻り、昭和の香りが強く漂う古びた団地に暮らす50歳の幼馴染のふたりの、取り立てて劇的なことも起こらないが、些細なあれこれがたっぷり詰まった日々のことが、ゆるく淡々と語られていて、好ましい。家族以上にお互いを知り尽くしている奈津子と野枝をずっと見ていたくなる一冊である。
R.I.P. 安らかに眠れ*久坂部羊
- 2022/07/12(火) 16:16:50
優しかった兄が、三人もの自殺志願者を殺めた――。世間から極悪人と糾弾される村瀬真也。連続凶悪事件を犯した兄が語り始める不可解な動機を解き明かそうと、妹の薫子は奔走するが、一線を越えてしまった真也の「知らなかった一面」に衝撃を受ける。自殺志願者を次々殺めた男の告白から見えてきた真実とは――。行きすぎた正義と、無関心な親切は、どちらが正しいのだろうか。誰もが目を逸らしたくなる問題に、著者自身も懸命に向き合い書き下ろした長編小説。
自殺したい者とそれを幇助した者、という現実を描いているが、本質はそこにとどまらず、個人の苦しみと他者の関わり方、誰の気持ちを優先するか、等々、立場や視点によって見え方が変わってくるものごとに焦点を当てているように思える。三人の自殺に手を貸した慎也の考え方には、最初は拒否感しかなかったが、読み進めるうちに、納得できるとは言えないまでも、そういう側面もあるかもしれないと、見方を変えて考えてみるきっかけを与えてくれた。だからと言って、慎也を擁護しようとは思えないのではあるが。そして、さらには、信頼して心を預けた人の影響がどれほど計り知れないかということも思い知らされる。導き方によって、人の進む道は変わってしまうのだと、改めて怖ささえ感じる。読後も重いものが胸に沈む一冊である。
透明な螺旋*東野圭吾
- 2022/07/11(月) 06:49:27
シリーズ第十弾。最新長編。
今、明かされる「ガリレオの真実」。
房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。
失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。
警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。
「愛する人を守ることは罪なのか」
ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。
何組もの母と子の在りようが描かれる中、何度か見える景色が変わる場面があり、しかもそこに、湯川先生自身も絡んできて、そもそものところからそうつながっていたのか、と思わされる。さまざまな形での「愛する人の守り方」を見せられたようにも思う。読み応えのある一冊だった。
ビブリア古書堂の事件手帖 Ⅲ ~扉子と虚ろな夢~*三上延
- 2022/07/08(金) 07:22:31
物語は母から娘へ――。ビブリア古書堂の事件手帖、新シリーズ第3弾!
春の霧雨が音もなく降り注ぐ北鎌倉。古書に纏わる特別な相談を請け負うビブリアに、新たな依頼人の姿があった。
ある古書店の跡取り息子の死により遺された約千冊の蔵書。高校生になる少年が相続するはずだった形見の本を、古書店の主でもある彼の祖父は、あろうことか全て売り払おうとしているという。
なぜ――不可解さを抱えながら、ビブリアも出店する即売会場で説得を試みる店主たち。そして、偶然依頼を耳にした店主の娘も、静かに謎へと近づいていく――。
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プロローグ・五日前
初日・映画パンフレット『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』
間章一・五日前
二日目・樋口一葉『通俗書簡文』
間章二・半年前
最終日・夢野久作『ドグラ・マグラ』
エピローグ・一ヶ月後
謎解きの主役は、扉子に移り変わりつつ、肝心なところは栞子さんがきちんと締めているところが、ほほえましくもある。少しずつ世代交代が進んでいくのだろう。今回は、依頼人の家族の在りようの物語だったが、それだけではなく、篠川家のこれからの物語でもあるような気がする。栞子の母の智恵子の存在が、どうにも計り知れなくて、次は恭一郎に何を吹き込み、大輔にどう働きかけるのかが気になって仕方がない。平和なときが来ることを祈りながら、次を待ちたいシリーズである。
0 ZERO*堂場瞬一
- 2022/07/06(水) 10:15:42
「すごい原稿がある」――ベストセラー作家が死の間際に残した一言より始まった原稿捜索。しかしそれは、出版業界を揺るがしかねないパンドラの箱だった……「創作」の倫理をも問う問題作!
病死した作家・岩佐友は人と関わることを避け孤立していた。同郷で高校大学と同窓の作家である主人公の古谷悠が、唯一親しくしていた人物と言っても過言ではない。岩佐が亡くなった後、息子の直斗から、未発表のすごい作品がある、という話を聞き、編集者の未知とともに探すことになる。岩佐の評伝を書こうと、未発表作品を含む岩佐のことを調べて歩くうちに、古谷の純粋な興味もあって、調べは枝葉を広げ、岩佐と彼の後輩に関することへと進んでいく。読者も、古谷とともに未発表作品への興味、岩佐と後輩の関係に対する興味、孤立を選んだ岩佐本人への興味で、次の展開を早く知りたくて仕方なくなる。ラスト近くに配された、作品中の作品とも言える重苦しい章に、結局すべての謎が含まれていて、読後感を一層重くしている。岩佐にとって、人生とはいったい何のためにあったのだろうか。ずしりと胸に重い一冊である。
ミステリーは非日常とともに!*未須本有生
- 2022/07/03(日) 18:23:29
ミステリー作家、デザイナー、映像作家、警察官僚の友人たちが自身の経験と知識を駆使し非日常で繰り広げられる日常の謎に挑む中編集!!
豪華クルーズ船で行われる謎解きゲーム、苦労して手に入れた旧いクルマにまつわる悲喜こもごも。
ファンとの交流会を豪華客船で行う企画を受けたミステリー作家の高沢のりおだが、クルーズ中に客船にまつわるトリックを二社分作らなくてはならなくなった。高沢は友人でかつて航空機に関わっていた倉崎に同行をたのみ、彼の工学的な知識に頼ろうと考える。高沢の苦難の旅が始まる。
念願の旧いBMWを手に入れた映像作家の深川は友人たちに自慢するためにドライブに誘う。旧いクルマ特有の問題に悩まされながらも楽しんでいる深川だが、友人の警察官僚・園部から車に関する謎を相談される。
「クルーズはミステリーとともに!」
「ドライブは旧き良きクルマとともに!」
豪華客船のクルーズも、いつどんな状況で動かなくなるか判らない旧い車でのドライブも、間違いなく非日常感満載である。そして、クルーズ船の旅の間にトリックを考え出し、参加者に解いてもらうというイベントがまた新しい趣向である。車の方も、旧い車をはらはらしながら愉しんでいたと思ったら、いつの間にかちゃんと事件の謎解きになっているあたり、さすがである。前作から引き続き登場するさまざまなジャンルのメンバーの個性とともに、存分に愉しめる一冊である。
ショートケーキ。*坂木司
- 2022/06/29(水) 18:46:23
星の数ほどあるケーキの種類のなかでも、不動の人気を誇る「苺のショートケーキ」。「和菓子のアン」シリーズなど、甘いものを描いた作品星のに定評のある著者による、誰しも思い出のひとつやふたつはあるだろうショートケーキをめぐる5篇の連作集です。
ショートケーキつながりの、ゆるい連作物語。ショートケーキの扱い方も、キーパーソンのつながり方も、そうきたか、という感じの緩さで、よかった。そして、どの物語も、互いを思いやるやさしさにあふれていて、甘酸っぱい心もちにさせてくれる。まさにショートケーキ。ショートケーキなくしてはありえなかった一冊である。
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